イギリスで徒然草(旧・ランカスター日記)

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Brexit イギリスEU離脱に思う(2)

Brexit論戦の焦点だったのは、とにかく移民問題であったと私は認識している。

離脱派のスローガンはTake back controlであり、
「自分たちの国のことは、自分たちで決める」という姿勢であった。
EUに加入している限り、イギリスは自国に流入する移民を規制することはできない。
EU内の人の移動は保証されているため、これを勝手にせばめたりせき止めたりすることは
許されていないからだ。
EU法は移民だけでなく、関税や人権法など、他にも内政に関わるさまざまな部分に
及んでいるため、これを「内政干渉だ」として離脱派はキャンペーンを展開していた。

イギリスでは、旧植民地であったインドやパキスタンなどEU外からの移民が多く、
これについてはEUの決まりに抵触しないので、4年ほど前にこれでもかというほど規制が厳しくなった。
(私も規制が厳しくなった後にEU外からの移民としてイギリスへ戻ってきたので、
ビザ取得はそれはもう大変であった)

しかし、ポーランドなど東ヨーロッパの比較的貧しい国から仕事を求めてやってくる人々や
昨今のシリア難民受け入れの問題もあり(シリアはEU外だが難民として流れつくのはEU国であるため)、
増え続けるEUからの移民の住処や福祉などを確保できるのか?しなければならないのか?
自国民の福祉や年金制度もカットされている現状があるのに?
という不安・不満が煽られて、離脱への方向へと向かっていったように思う。

とくに、「移民は豊かなイギリスの福祉制度を悪用して、
無料の医療制度や生活保護などを受けにやってくる」というような、
多くの人にとって事実とはかけ離れたステートメントが飛び交っていた。

実際は、大多数の移民はよく働くし、税金もきちんと納めて
医療の財源や経済に寄与しているのだが、
そういった移民と交流する場もない、分断された世界に住んでいる人々にとっては
非情に効果的な煽り文句であったようだ。

EU内からの移民してきた人々は、今までは自国のパスポートさえあれば
ビザも必要なく、気軽に仕事に就いたり、住居を探したりできた。
たとえばイギリスに降り立ったその日に求人を見つけて応募し、
採用されればそのまま働きはじめることが、合法的に可能であったのだ。
これはすごい柔軟性である。

それが、Brexit後には滞在許可証なりビザなりを取得しなければならないことになる。
これからイギリスへ来たい人はもちろん、現在イギリスで既に定住しているEUからの移民も
制度が整い次第許可証などを申請せねばならなくなるだろう。それも高いお金を払って。
当然のことである。これからはEU内からであろうと関係なくなるからだ。

私が個人的に大変だろうなと思うのは、
こうした人々がこれから激変する入国管理制度に適応しなければならないという点だ。
今まで、

「EUから来たの?今無職?英語ができない?問題ないよ。
仕事もこれから探せばいいし、投票権だってあるし、
もちろん医療制度だって無料だよ!EU外からの外国人配偶者だって
ほぼフリーパスで受け入れてあげるよ。
全然問題ない、EU市民なら信用できるからね!」


と言われていたのに、これからは

「何?イギリス国外から来た?仕事は?年収は?
高度な技能を持っているならビザを出さんこともないがな。
英語能力も十分なければ入れることはできん。試験を受けてスコアを提出しろ。
外国人配偶者を連れて来たい?偽装結婚じゃないんだろうな?
証明しろ。その外国人配偶者はここで働くつもりなのか?
外国人配偶者は低能だし仕事が見つかるかわからないから、信用ならんな。
まさか生活保護なんか受けるつもりじゃないだろうな。
医療費は一定額を前払いしろ。返金は一切なしだ。
おまえの年収か貯金が一定水準以上なければ配偶者は入国できんぞ。
養育する子どもがいるならもっとないとイギリスには入れんぞ。
投票権?外国人にあるわけないだろ。欲しいなら何年も働いて、
イギリス国籍を取得するんだな。」


という、ものすごい不信を全面に押し出した態度で扱われるからだ。
ちなみに、これは我々EU外からの移民が扱われてきた態度である。

あまりにもEU内からの移民と扱いが違うので本当に腹立たしかったが、
Brexit後はまず間違いなく我々EU外移民と同じレベルの扱いになるのだろうと思うと
気の毒ではある。

この手のひらを返したような扱いに憤り、イギリスを去る人もいるだろう。
身軽な若い人なら簡単に他の国へ移ることができる。
しかし、もうイギリスへ定住してしまい、仕事もあり、家も買い、子どもも学校に馴染んでいて・・・
という状態だったら、一体どれだけの人が簡単に去る選択を取れるだろうか。

そして、連日のように「移民は問題だ」「我々の仕事を横取りし、福祉を悪用し、治安を悪化させる」
などと言われるのだ。こんな扱いを受け続けていたら、不満が募り、治安が悪くなるのも
当然の流れと言えそうだが・・・

Brexit後の移民ポリシーがどうなっていくのか、あまり明るい展望はないが、注目していきたい。

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Brexit イギリスEU離脱に思う(1)

学会兼ホリデーで国外に出ていた23日に、国民投票でイギリスがEU離脱を決定した。

23日深夜には残留派が優勢らしい、と聞いていたので、まあそうだよね、と思って寝たら
24日の朝、携帯でニュースを見ていた夫が(彼にしては珍しく)Sワードをつぶやいたので、
「えっまさか離脱?」と聞いたら本当にそうだった。

EU離脱派の意見はエビデンスやソースがだいぶ曖昧だと感じたことと、
離脱後のことが何一つクリアでないのに比べて、残留のメリットはそれなりにあるので
なんだかんだ言っても残留になるだろう、と思っていたので本当に驚いた。

夫は自国がEUから離脱すると決定したことがにわかには信じられず、ものすごくショックを受けている。
数日経った今でも、大好きなサッカーの試合観戦よりもBrexit関連のニュースに釘づけである。
自国がEU離脱を選択し、移民排斥の方向に突き進んでいることに深く失望しているようだ。
妻が外国人で、かつ娘も半分外国の血が入っている(そして外見で明らかに混血とわかる)わけだから、
彼の憂いは当然かもしれない。

今回の投票結果で、さまざまな記述統計が発表されて実感するのは
「いかに自分たちの属しているグループと、それ以外のグループとの隔たりが大きかったか」
ということである。
イギリスの大学では、実にさまざまな国籍の教員や研究員が働いている。
EU加盟国であるということが労働力の流動性を保証し、優秀な人材に来てもらいやすい環境に
なっていたからだ。大学教員の中ではおそらく残留派が圧倒的多数であっただろう。
また、私たちの住んでいる地域はロンドン通勤圏で、その点からも残留派が多い印象だった。
だから、まさか離脱になるなんて思ってもみなかった。

しかし、ふたを開けてみれば、ロンドンや比較的大きな都市、および大学都市以外では
離脱派が多数であった。しかも、年齢、教育程度、出生地などの統計を見ると
「若者vs上の世代」、「都市在住vs地方在住」、「教育程度高いvsそうでない」、
「イギリス国外生まれvsイギリス生まれ」という分断がかなりはっきり見える。
いずれも前者が残留組で、後者が離脱組だ。
まあ、分布図の散らばり具合から見ると、そこまで高い相関があるわけではなさそうだが
(せいぜい0.5程度かと予想)、
全国規模であることを考えるとかなり強めの傾向ではあるのだろう。
でもその分断されているグループ同士はおそらく普段交流することのない人々で、
だからお互い「もちろん残留だろ」「まさか離脱以外にありえない」という認識だったのではないだろうか。
これはよく考えるととても恐ろしいことだ。

離脱の影響は、すでに為替レートや不動産の値段などに現れつつあるが、
大学という文脈に限っていえばイギリスの大学はEUから多大な補助金や研究資金を受け取っており、
これがなくなる、あるいは著しく減少するとなると
大学経営は厳しくなることが予想される。
これまでは、その補助金があったのでEUからの学生は比較的安い学費でイギリスの大学で学ぶことができたが、
それもなくなるか大幅に減るかするだろうから学生数も減り、ますます経営難に陥るだろう。
どこの大学もstruggleするだろうから、他の大学なら状況がマシ、というのは考えにくいので、
そのうち大学外に転職しなければならなくなるかもしれない。
まあ、嫌な展望だが、見通しが立たない中で憂えても仕方がないので、今は目の前の仕事を頑張るしかない。

ちなみに、イギリス人の外国人配偶者(それもEU外から)という身分で
この国に住んでいる私には投票権はない。
働いて税金を納めていてもまったく関係なく、どんな規模の選挙であれ、投票することはできない。
これはイギリス国籍を取得しない限り、永住権を得たとしても同じである。

しかし、イギリスがEUから離脱するということは、イギリス国籍を持っていても
この先EU他国間を自由に行き来し、就労する権利は失われてしまうということだ。
他の「EU外国からの移民」と同じように、他国で就労したければビザが必要になる。
それなら日本国籍でいるのともはや条件は変わらないし、
イギリス国籍を取得する(=日本国籍を喪失する(日本は二重国籍を認めていないため))
メリットはほとんどない。

真面目に働いて税金を納めて暮らしているのに投票権がないのは腹立たしいが、
いざとなったら帰れる祖国があるということは大事な心の支えだ。
この先イギリスがますます移民排斥の方向に向かうとしたら、もっと嫌なことや腹の立つことがあるだろう。
人間というものに絶望する日が来るかもしれない。
そんな日が来て、ああもう外国に住むのは無理だ・・・となったとき、
日本は一切の証明を必要とせず、両手を広げて「おかえり」と私を受け入れてくれるのだ。
そんな風に無条件で受け入れてくれる国は世界でただ一つしかない。
一生日本国籍を手放すことはないだろう、と改めて強く思った。

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